指定された時間よりも随分早く着いてしまったが、無事に部屋に入ることができた。まだ午前中だというのに外の気温は既に30度を超えている。そのせいで、部屋の中も少しぬるい空気が篭っているようだった。緊張で息が浅い。堪らなくなって、荷物を下ろすや窓を開けた。暑いが、新鮮な空気が入ってくる。深呼吸して部屋を見渡す。ローテーブルにクッション、あまり大きくないがベッドもある。床...
2025-09-30 22:27:25 +0000 UTC
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迷わないか不安になりつつ、美術館への道を再び進む。日が暮れた山道は、暗くて恐ろしい。昼間に見た人形たちも幻だったのではないかとふと訝るほどに心細い。小さな灯りで照らされた美術館の看板を見つけたときは、心からホッとした。
入り口のドアには、出口からお入りくださいと書いてある看板がかかっていた。裏に回り込むと、ドアの鍵が空いていた。人形の出迎えでもあるかと身構えてい...
2025-09-15 22:47:13 +0000 UTC
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絵画から出てくると、直立して待っていた案内人形は少しもじもじしているようにみえた。だが、次に行くタイミングだと察したのか、すぐに次の部屋への案内に戻った。
人形の導きで次の部屋に入ると、やはり部屋には美術品が一つだけ展示されている。これまでの作品と違って、見たこともない姿だ。抽象彫刻とでもいうのだろうか。形容し難いオブジェには、様々な色の球体が付いている。オブジ...
2025-09-01 12:36:04 +0000 UTC
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閉園時間になる頃、ようやくマスク内の換気が自然に行われて、臭いから解放されたのだが、鼻に染み付いたのか、まだ臭いがするような気がする。ショーでの消耗が思ったよりもきつくて、今日の分の休憩は使い切ってしまった。重い身体を引きずって、ゲートでのお見送りグリーティングだ。日差しが弱くなってはいるが、アスファルトが溜め込んだ熱は依然として脚の裏から私を蒸し焼きにする。
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2025-08-15 10:28:43 +0000 UTC
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ふさふさのフードを被った女の子キャラ。猿のような丸い耳に、体は虎柄、手足はタヌキみたいな茶色で、すごくもふもふしている。お尻には蛇の尻尾が生えている。弱点は尻尾。触られるとくすぐったそうにしているぞ。
世間はいわゆるお盆休みというやつで、どこもかしこも混雑している。SNSを覗けば、楽しそうな思い出の写真がずらりと並ぶその一方で、休みなく働く人々の恨み言も同じくらい...
2025-08-15 10:25:41 +0000 UTC
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まだ震えているミロのヴィーナスを後にして、次に行くことにした。メイド人形は、それを察して、次の部屋へと先導して歩いていく。
中に入ると、正面には、大きな絵画があった。いや、絵画と言って良いものか。モチーフになっている元の絵画は、ヴィーナスの誕生だ。描かれた人物は、皆デフォルメされているが、構図や背景から明らかだ。しかし、この作品には、奥行きがあった。二次元の上に表...
2025-08-02 04:25:54 +0000 UTC
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部屋に入ると、広々とした空間の真ん中に、作品があった。真っ白な彫像だ。その形には見覚えがある。ミロのヴィーナスだ。左の方から先、右腕の二の腕の途中から先がないのを見てそう判断したわけだが、その顔はガイドの人形同様に、アニメチックな顔にデフォルメされている。着色前のフィギュアと言ったら分かり良いだろうか。髪型は、毛先にパーマのかかったショートボブにデフォルメされて...
2025-08-02 04:24:21 +0000 UTC
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山の緑は青々と繁っている。山道は広葉樹のカーテンで覆われて、真夏の光は全くと言っていいほど入ってこない。スキー場のある山の上へと登る道を逸れて、脇道に入ったのだから仕方がないとはいえ、整備がまるで行き届いていないこんな悪路が、よくも残っているものだと感心する。
昨日まで出張の仕事で近くの街まで来ていたのだが、ついでに何日か休みをとって観光でもして帰ろうと、ホテル...
2025-08-02 04:22:02 +0000 UTC
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最後のご主人様を見送った頃には、もう何度絶頂に達したか分からなくなっていた。もう少しで解放される。期待感と共に不安も込み上げる。この後の流れもかなりきついものではあるのだ。
簡単な掃除を終えると、メイド達はフロアの真ん中に集まり、オペレーターの会話に従ってキャラクターの演技を続けていた。オペレーターの練習時間とのことで、30分ほど、なすがままに指示に従う。内容はい...
2025-07-17 11:17:47 +0000 UTC
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「お料理が出来上がるまでよかったらミニゲームで遊びませんか?」
テーブルに戻ると、ご主人様を飽きさせないように遊ばなくてはならない。ここもコインを貰える枚数に響いてくる。
「へえ!お願いします!なにができるの?」
アオ様が前のめりに聞く。
「そうですね、では、神経衰弱はいかがでしょう?」
いくつかミニゲームがあるのだが、ワカナのオペレーターは、神経衰弱ばかり選ぶ。
...
2025-07-17 11:15:48 +0000 UTC
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ワカナは厨房からすぐに戻ってきた。
「お料理が出来上がるまでよかったらミニゲームで遊びませんか?」
客を飽きさせない仕組みは流石にエンタメ系に強いだけあって充実している。
「へえ!お願いします!なにができるの?」
アオが興奮気味に聞く。
「そうですね、では、神経衰弱はいかがでしょう?」
「いいね、コンもやるよな?!」
もうノリノリである。しかし、カードはどうするのだ...
2025-07-17 03:44:47 +0000 UTC
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ようやく出番が終わり、テントにステラが帰ってきた。だいぶ時間が押してしまった。次のゲストが入ってくる前に撤収しなければ。そう伝えると、ステラは頷いて、テントの外を指差す。もう行けるということだろう。少し考える。荷物は最低限にしていたから、楽屋の撤収作業はない。
「このまま、駐車場までグリーティングしながら移動でも大丈夫そう?」
ステラは頷く。このまま、車に乗せて...
2025-07-03 22:29:11 +0000 UTC
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そのまま、外に出てグリーティングをしながら、ステージ控え室へと移動した。キャラを知っている人も知らない人も、皆手を振ってくれる。ステラはその度に近寄って、丁寧にファンサしていく。小さい子には入念に、大きいお友だちには、シャッターチャンスをいくつかつくる。先輩のグリーティングは本当に細やかな気配りが行き届いていて好きだ。お客さんが羨ましくなるタイミングも多々あるの...
2025-07-03 22:27:39 +0000 UTC
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昼前まで降っていた雨が、急にギラつき出した太陽に沸かされて、間も無く日暮れだというのに、サウナのような暑苦しさで街を包んでいる。
「うわ、めっちゃ外やばいっス。大丈夫っスか、先輩?」
私は、エアコンの効いた楽屋に駆け込みながら先輩の様子をみる。先輩は既にほとんど着替えを終えて、後はマスクを被るだけの状態になっていた。丸く開いたタイツの穴から出た顔は恥ずかしさからか...
2025-07-03 22:24:46 +0000 UTC
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三
暑さと息苦しさで満たされていく頭で、目の前で交わされる会話をなんとか追いながら、私は食卓から少し離れて立っていた。食事を運ぶ際に動き回って上がった息が、マスクの中の乏しい酸素をさらに枯れさせていく。隣に立っている赤毛のメイドも肩で息をしているということは、多分同じような状況だろう。しかし、内側に仕込まれている仕掛けまでは同じかまでは分からない。無数の掃除用ロボ...
2025-06-15 11:17:16 +0000 UTC
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二
メイドが部屋を出てしばらくすると、台車を押して再び入室してきた。運ばれてきたのは水で満たされた水槽だ。魚の1匹も泳いでいないそのガラス面に私の訝しむ顔が映った。
「さて、最大の問題は、着用時間ですね。キャラクターの運用は、少数精鋭で、かつ、常にパークにキャラを存在させるためには、休憩時間すらも着ぐるみを脱がずに済むような魔法が必要です。」
ソファに上品に腰掛けた...
2025-06-15 11:15:17 +0000 UTC
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一
レースカーテンが、窓から差し込む光を拡散させて、部屋を柔らかく照らしていた。シンプルなシャンデリアの光が加わり、部屋全体が落ち着いた雰囲気を醸している。
中央の応接テーブルでは、真っ白なカップに注がれた紅茶から微かに湯気が立ち上っていて、装飾の少ない皿には、小さなクッキーが並んでいた。
「ありがとう、ミーナ。」
給仕を終えたメイドに、ソファに腰掛けた女性が声を...
2025-06-15 11:12:16 +0000 UTC
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チョコレートソースがこびりついた皿を目の前のトレイに載せてついたため息は、目の前の壁にぶつかって跳ね返り、そのまま私の顔にまとわりついた。吐息に含まれる水分と汗が混じり合って、顔中に粒をつくっている。外は今どんな状況なのだろう。私がここに来てから過ぎた日を数えてみるが、途中で諦めた。もう秋になっているのだろうか。透き通った空を流れる風が恋しい。
テーブルの上を片...
2025-06-01 04:05:03 +0000 UTC
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紅葉真っ盛りの峠を降りて、まっすぐ伸びた国道をしばらく走ると、開けた土地に巨大な建物がぽつんと現れた。
「ほら、あれが工場で、奥の建物がミュージアム。やっぱ平日だし混んでないな。」
長時間運転した疲れなど微塵も感じない口調で独り言を言いながら、アオは駐車場に車を停めた。よく晴れた景色とは裏腹に秋風が冷たい。
「さて、行きますか。」
すたすたとミュージアムの方に歩いて...
2025-06-01 04:00:54 +0000 UTC
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来月の投稿の予告です。お楽しみに〜
画像は、②に出てくるメイドさんです。
① ロボメイドカフェ 前編(6月初旬)
「おかえりなさいませ、ご主人様。」
パステルグリーンの機体が姿を現した。声色には機械っぽさがあるものの、かなり人間の声に近いと感じた。さっき前のお客さん越しに聞こえた声は、クールな印象を受けたが、目の前のロボットから聞こえてきたの...
2025-05-19 23:03:46 +0000 UTC
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テントを片付けた運転手さんが、乗り込んできたのがドアの音でわかった。
「あれ?フラワー着替えないの?」
「時間もったいないから事務所で片付けるそうです!」
「そんなこと言って、つむちゃんのためなんじゃないの?」
「えへへ〜。」
シートベルトを締めて、背もたれに体重を預けると、髪の毛の中で蒸れていた空気がマスクの中に逆流してきた。口に貼られた布は汗や呼吸、果てはこぼれ...
2025-05-05 03:52:05 +0000 UTC
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気を抜くと眠ってしまいそうだった。もちろんステージ前で緊張はしているのだが、それ以上に、ゴールデンウィークは休みなく仕事だったから、疲労がピークに近かった。とはいえ、今日、子どもの日が終われば、明日はオフをもらえることになっている。
しかし、今日は早くも夏日らしい。エアコンの効いた車内でも、マギピュアの衣装を全身タイツの上に着込んでいると少し暑い。そのうえ、膝の...
2025-05-05 03:49:54 +0000 UTC
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ゴールデンウィーク真っ只中ということで、道の駅はいつになく混雑している。さしたる目玉もない小規模な施設だというのにこれだけ人が集まるのは、今日がこどもの日だからというだけではない。五月晴れで早くも夏日となったこの日、地元の子どもたちを集めて、道の駅でこいのぼりを揚げるイベントが開催されるのだ。参加者だろうか、親子連れが目立つ。私はといえばカメラを首からぶら下げて一...
2025-04-29 04:54:40 +0000 UTC
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