キスというものは好きな人とするものだと思っていた時期が俺にもあった。
「……ッ、は、ぅ、ん……ッ」
「っ、齋藤君……ッ」
キスだけでいいから相手をしてほしい、などと顔も知らない三年の先輩に泣きつかれてとうとう俺は断りきれずに一度だけなら、と許可したのだが、どうしてこうなるのか。後頭部を押さえ付けられ、深く唇を貪られる。肉厚な舌に咥内を蹂躙され、酸素ごと唾液を吸わ...
2021-04-24 11:56:05 +0000 UTC
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誰しも苦手なものの一つや二つくらいある。それは俺も同じだった。
高いところ、怖い大人、不良……あと派手な女子も苦手だ。それでもそれらは生きていく上でのものだと思っていた。死ねば怖いものなどなくなる。
そう思っていたのだ、俺だって。
「あ、準一だ〜!」
明け方の館内。
どうせやることもないので散歩がてら外の空気でも吸いに行くかと部屋を出て、一階のロビーまで降りて...
2021-04-20 15:37:22 +0000 UTC
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男たるもの、溜まったら抜く。それは生理的なものなので何ら恥じることではないと分かっていても、転校して岩片と同じ部屋になってからは明らかに一人で自慰をする暇がなくなってしまった。
とは言え性欲がないわけでもない。抜かなかった分の諸々が溜まれば溜まるほどしょうもないことで反応してしまったり、朝起きたら勃起してるなんてこともしばしばあった。
そうなったら最悪だ。
そ...
2021-04-10 14:58:41 +0000 UTC
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「亮太、お前あそこの店辞めたって本当か?」
いきなり方人さんに「飯食いに行こうぜ」と呼び出されたと思いきや、会って開口早々触れられたくない話題を持ち出される。
なぜこの人は飯が不味くなる話題ばかりを出すのか。今更ではあるし、分かった上で会うことを承諾したのは俺だが。
丁度届いたコーヒーを受け取り、俺は向かい側に座る方人さんを見た。
「……だって、あそこの店長うる...
2021-04-01 13:57:45 +0000 UTC
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それはある夜のことだった。
「齋藤君、俺とゲームしようよ」
目の前の青髪の男はそう、椅子の背もたれを肘置き代わりにしながら楽しげに笑う。
「……ゲーム?」
「そう。俺がお題を出すから、君はただそれを遂行するだけ。ああ、ちゃんと証拠も写真なりなんなり用意してね」
「……嫌だと言ったら?」
「さあ、どうしようかな。期限設けたり逃げたりでもしたら……じゃ、罰ゲームってこと...
2021-03-19 12:49:19 +0000 UTC
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眠ってはいけない。
目を覚ませ、瞼を開け。何度繰り返しても意識と肉体が解離したように思い通りにならない。
どれほどの時間気を失っていたのか。
腹の奥、焼けるような熱と違和感。しまった、と思ったときには何もかもが遅かった。
目を開いてるはずなのに視界は何も見えない。声を上げようとしてもくぐもった声が漏れるばかりで、何か猿轡のようなものを噛まされてると分かった。...
2021-03-15 15:07:06 +0000 UTC
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「ハジメ、お前怪我してんのか?」
自室の扉を開き、「ただいま」を言うよりも先に俺の方を見た岩片が言葉を投げ掛けてくる方が早かった。
何かを言われる前にさっさと寝ようと思ったが、タイミングが悪かった。頬を指差され、「あー」と俺は先程のひと悶着を思い出す。
絡まれて面倒だったので躱そうとしたが失敗した。なにかあるとすぐ手が出るような連中が集まった学園だ。今となっては...
2021-03-10 13:46:59 +0000 UTC
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だから嫌だった。巻き込みたくなかった。
この男の性格など嫌というほどわかっていたからこそ、余計。
「……スレイヴ殿、言ったはずだ。自分は、貴殿のためならなんでもすると」
夜も明けていない薄暗い部屋の中。抱き締められた腕に思わず身を攀じるが、がっちりと回された腕は離れない。
ナイト、と目の前の男の名前を呼び、その胸を叩いた。
「ナイト、俺は……いい。お前に助けて...
2021-02-27 11:36:52 +0000 UTC
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「おや尾張さん、貴方が生徒会室に来るなんて珍しいですね」
「まあな、ちょっと用事があって」
「用事ですか?」
「政岡いるか?あいつに用があるんだよ」
生徒会室前。
単刀直入に告げれば、扉の前の能義は少し考えたように顎に触れる。そして、ええ、と微笑んだ。
「会長なら居ますよ。……ただ」
「ただ?」
「尾張さんには会いたくないと」
……やはり、そういうことか。
政岡が明...
2021-02-27 08:34:12 +0000 UTC
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「俺が思うに、君は疲れてるんだと思うよ。人は疲れてると失敗しやすくなって、そのせいで自信がなくなっていく。自分のせいで、自分が駄目だから。……そうやって自分の首を締めていくんだ。君はたまたま疲れてただけなのに、それが真実だと思い込んでは自分自身の本当の価値に気付かなくなる」
「君のその自信のなさもそれが原因なんだと思うよ」弱っていた心に、縁の声は優しく甘く、深く浸...
2021-02-18 13:28:26 +0000 UTC
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まずい場面に居合わせてしまったかもしれない。
昼下がりの校門前。
少し用事があって通りかかり、知人の姿を見かけて声をかけようとすればその向かい側には見知らぬ他校の女子生徒。知人――十勝直秀の様子からしてなにやら揉めてるらしい。いつもの修羅場かと思い、咄嗟に物陰に身を隠した矢先に女子生徒に抱き締められる十勝を見て俺は『まずい』と直感した。何がまずいのか自分にもわ...
2021-01-28 13:37:55 +0000 UTC
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何もかもが煩わしかった。
学校上げての行事も、交友関係も、全部全部煩わしかった。人と関わるのも嫌だった。しょうもないやつらにする愛想笑いなんて以ての外だ。
いつからだろうか、こんなふうに思うようになったのは。
ベッドの上、目を瞑る。早朝四時、眠れない夜は毎回あの箱庭での出来事が蘇る。
並榎田第一中学校。
島に建つその全寮制の男子校は俺の母校でもある。そこで卒...
2021-01-24 17:16:53 +0000 UTC
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泥のように眠るとはまさにこのことだろう。
気付けば朝、鳥の囀りとともに目を覚ます。昨夜どうやって部屋まで戻ってきたのかすら覚えてない。確か授業が終わって、帰ろうとしたとき……。
とそこまで思い出そうとして自分が服を着ていないことに気付いた。布団の中、下腹部にも妙な違和感を覚え、恐る恐る布団を捲った俺はひっと息を飲んだ。
何故、俺は下着すら履いていないのか。
考...
2021-01-16 08:16:16 +0000 UTC
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凶、小吉、吉、大凶。
「なにこれ、大吉全然出ないし」
「……そもそも、おみくじって何度もひくものじゃないと思うんだけど……。吉でよかったんじゃ……」
「だって吉なのに内容ムカつくし」
「……」
そういうものじゃないだろう、と思ったが確かに志摩に見せてもらったおみくじにはもっともらしいことが書かれていた。……大人しくしろ、とか、人の意見を素直に聞く、とか。ムカつくとい...
2021-01-01 14:50:25 +0000 UTC
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なんでこんなことになったのだろうか。
「ユウキ君、終わったぁ?」
「……ま、まだです……」
「どんだけ時間かかってんだよ、一問十秒で終わらせて次行け次」
また無茶苦茶なこと言い出した……。
背後、すっかり飽きたのかイライラし始めてる阿賀松から座っている椅子を蹴られ、先程までとは別の緊張感を覚える。
俺の勉強を見てやると言い出したのは阿賀松の方からだった。
あまり...
2020-12-28 11:47:02 +0000 UTC
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「ああ、いい感じですよ五味君。あ、……待って。もっと右側にお願いします」
「お……お前な、人遣いが荒いんだよ」
デッキ3、二等客室前通路。
誰かいないだろうかと思い、探索していると通路の先からなにやら声が聞こえてきた。こっそりと覗いてみれば、そこには大きな荷物を運ぶ五味とそれを見てる志木村がいた。
「……おや、齋藤君じゃないですか。おはよう……って時間でもないです...
2020-12-18 15:20:25 +0000 UTC
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「おい佳那汰、佳那汰!いつまで寝てるんだ!」
それはとある休日のことだった。
心地良い眠りを妨げるほどのクソでかい声に鼓膜ごと揺さぶられる。昨夜飲み過ぎたようだ、二日酔いの頭にはきつい。
「う゛……るせえな……」と寝返りを打とうとした矢先、布団を剥ぎ取られる。寒さに耐えられず飛び起きれば、そこにはスーツ姿の男――原田未奈人がいた。シワ一つない黒スーツ、見下ろす目は...
2020-11-22 16:57:48 +0000 UTC
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まただ、何度目だ。二度とこいつに抱かれるものかと思ってるのに何度目だ、自分で自分が情けなくなってくる。
一人勝手に満足してやがるキモオタクソ眼鏡が中に出したものの感触がただ生々しくて嫌だった。「早く抜け!」とゲシゲシやつを蹴ろうとすれば、野郎は「いてて、分かった抜くから蹴るなよ!」と俺の足首を掴むのだ。
「さわるな、……ッぅ、く……ぅ……ッ」
「そりゃ無茶だろ……...
2020-11-07 13:17:49 +0000 UTC
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糸のように力が抜け落ちた体は重い。
いつもの事後のような爽快感も気怠さもなにもない。気絶したように眠るハジメを見下ろす。気付けば外は白ばんでいた。
やり過ぎた、と思った。
これほど強い感情を覚えたことは初めてだった。
怒りもあるがそれだけではない。
「……取り敢えず、一発抜くか」
シャワーを浴び、頭や体から熱が引いていくにつれまるで脳はクリアになっていく。...
2020-10-24 14:39:59 +0000 UTC
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例えば、たまたま上がる時間が一緒だった。んで、俺もあいつも腹が減ってた。時間が時間だけどせっかくだしっていう理由で飲み屋に行ったのが日付が変わる前くらいだ。
それから、それから……記憶がない。
「っ、ん、ぅ……?」
まず感じたのは下腹部の違和感だった。
初めこそは変な感じがする、というふんわりとした違和感だったが意識がはっきりとするに連れ明らかに一部が熱を帯び...
2020-10-17 14:02:23 +0000 UTC
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小さい頃からずっと側にいた。
大きな村でもない、住民もそれほど多くないので村全体が大家族みたいなものだったのだ。
そんな村で同じ年に生まれた俺達は最早兄弟のように育てられた。
周りは大人ばかりで、年の近い子供は俺とあいつしかいないのもあって俺達はずっと一緒に遊んでいた。
「大きくなったら何になりたい?」
「俺は国一番の剣士になりたい!こう……ひと振りで全員倒すん...
2020-09-17 12:39:50 +0000 UTC
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ここ最近阿賀松の機嫌がいい。
殴られるようなことがないだけまだマシなのだろうが、機嫌が良い奴はいつどこでその機嫌が悪くなるのか分からないだけに余計恐ろしかった。
それに、そんなときに限って阿賀松は俺を呼び出すのだ。
「ユウキ君、こっち来いよ」
呼び出されて早々、阿賀松の座るソファーベッドまで呼付けられる。やつが叩くのは自分の膝の上だ。ニヤついた口元、甘ったるい...
2020-09-12 13:56:59 +0000 UTC
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いつものように朝目を覚まし、ぐーすか眠ってる岩片の布団を直して顔を洗おうと洗面所へ向かったとき。
「な……っ、にゃ、んだこれ……ッ!!」
鏡の中、普段ならないはずのものが己の側頭部から生えていた。無数のふわふわな毛に覆われたぴんと上を向いたそれは間違いない、猫の耳だ。つけ耳か、と恐る恐る触れればまるで体の一部のように触れた感触が直に伝わってくるのだ。
「う、嘘だ...
2020-09-05 10:10:05 +0000 UTC
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元シリーズ一覧【齋藤先生の受難の日々】
https://t589423.fanbox.cc/tags/%E6%95%99%E5%B8%AB%E3%83%91%E3%83%AD
夢の教師生活にも大分慣れた頃。
学生の自分が憧れていたものと現実の自分が大分掛け離れていることに気付いたときには最早何もかもが手遅れだった。
今日も午前の授業を終え、職員室に戻ろうかとしていたときだ。
「先生」と肩を掴まれ、ぎょっとする。背後を振り返ればそこには自分の担当ク...
2020-08-07 13:55:37 +0000 UTC
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「嫌なら大人しく自分の部屋の小せえ風呂入ればいいだろ」
「いや俺はいいけどお前こそ嫌だろ?無理して入らなくていいんじゃないか?」
「俺は嫌だと言っていないが?」
「……ぐ」
ああ言えばこういう。
だから嫌なんだ、この男は。
大浴場脱衣室。
ここで俺が帰ったらどうせ『逃げた』だとか『自意識過剰か?』とかボロクソ言われるのだろう。こいつなら絶対に言う。100%言う。間違いない。
...
2020-08-02 11:30:55 +0000 UTC
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別に可愛い可愛いされたいわけじゃないし、寧ろ暑苦しい野郎相手にそんなことされても全くミリほども嬉しくない。けれどだ。
「邪魔だ、退け」
ここまで邪険にされるのもそれはそれで癪だった。
「邪魔って……俺は一応客なんだけどな?」
「なら客らしくしてたらどうだ」
客らしくってなんだよ。当たり屋みたいないちゃもんの付け方しやがって。内心文句言いつつ「はいはい」と取り敢え...
2020-07-20 10:24:32 +0000 UTC
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会長と一緒にいればいるほど会長のことが分からなくなる。
優しくて、俺のことを助けてくれる会長。
真面目で他人に厳しい会長。
……そして、俺の知らない会長がいる。
たまに見せる知らない芳川会長の顔に恐怖を覚えることはあった、それでも俺はそんな会長のことを含めて少しでも知りたいと思ったのだ。
理解出来たならば、そう思うのに現実はどうだ。
閉じられた扉は会長が出る...
2020-07-13 19:44:14 +0000 UTC
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魔界に来て変わったことといえば勿論周りの環境もだが、それ以上に自分自身が変わったとつくづく思い知らされた。
具体的に何が、と言われれば答えるのには憚れるのだが……一番の変化といえばやはり……まあ、そのなんだ。身も蓋もない言い方をすれば黒羽に犯されたことになるのだけれども。
「っ、ん……ぅ……」
そして現在進行形、今まさにあの夜のことを思い出して自室の布団の上、...
2020-06-30 17:24:01 +0000 UTC
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栫井との恋人とも呼べないような関係は暫く続いた。
急にいなくなったと思えば、ある日突然帰ってくる。暫くいると思えばいつの間にかにいなくなる。
栫井にとって俺は都合のいい宿代わりなのかもしれない。それでも良かった、栫井が帰ってきたいと思える場所があるならそれだけでいいのではないか。なあなあとした関係が俺達には丁度いいのだ。
そう、栫井がいなくなった部屋の中ぼんや...
2020-06-26 08:09:14 +0000 UTC
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「フハハ、原田!朝から辛気臭い面だな!梅雨時期だからといって貴様までそんな顔をしてるとせっかくの除湿機も無意味だ!少しは笑ってみせろ、原田!接客の基本中の基本だぞ!」
「店長……声でかい……うぐ」
「なんだ?まさかまた二日酔いか?……どうせ昨夜紀平たちとまたハメを外したのだろう」
「……な、なんで知って……」
「今朝紀平から二日酔いで休むという連絡が来たからな」
き、...
2020-06-14 15:20:53 +0000 UTC
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