爽やかな風が、二人の間を通り抜けた。
学校の屋上には他に人は見当たらない。
若々しく、生命力にあふれた青年たちが蠢いているのを眼下に望むその姿は、明らかに異様だ。
二人は服を着ていなかった。
肌は銀色で、所々に細い線が見て取れた。
その頭に髪は見受けられない。日の光を浴びて煌めいていた。
時折体を動かせば、金属が擦れるような音が聞こえる。
「獲物がいっぱいだね、イブ」
胸...
2021-10-27 05:54:34 +0000 UTC
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「蓮の様子が変?」
談話室でテーブルを囲んで話す涼、育也、奏多の三人。
訝し気に眉を吊り上げて、涼は他二人の顔を見た。
「絶対変だよ。だって、蓮くんはあんな事…」
「あんな事?」
「その……」
「僕が話すよ」
要約するとこういうことだった。
怪人の反応を検知して向かった先は、蓮が住んでいるマンションだった。
育也と奏多で探しても怪人の姿は見つからず、念のため蓮の部屋を訪れ...
2021-09-30 04:50:05 +0000 UTC
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白い煙が立ち込めるシャワールーム。
絶え間ない水音が響き渡るその空間には、一人の男しかいなかった。
涼は壁に片手をついて、うなだれるような姿勢で後頭部に水を浴び続けている。
練習後の疲れに浸っているのか、それとも単純にその行動が彼の癖なのか、それは彼自身にしか分からない。
ふと物音が聞こえた。
この施設を使い慣れた涼にならその音が何なのかすぐにわかった。
シャワールーム...
2021-08-31 05:53:39 +0000 UTC
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「わぁ、海だぁ!」
人目も気にせず叫ぶと、奏多は一目散に走り出した。
躊躇なく海に踏み込むと、振り返って眩しい笑顔を俺たちに見せる。
「皆も早く来てよ!」
「待ってろ奏多!」
蒼汰が走り出し、育也が歩きながらそれに続く。
水しぶきを立てて、年甲斐もなくはしゃぐ蒼汰と奏多。
いや、楽しめるときに楽しむのが一番大切なのかもしれないな。
「お前は行かないのか?」
「嫌だよ。焼け...
2021-07-31 08:21:55 +0000 UTC
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玉座に腰掛けたウィルの目の前に、突如として瘴気のゲートが開いた。
瘴気をゲートとして開けるのはある程度の瘴気を持つ者だけ。
この空間にやってこれる時点で敵ではないのだろうと呑気に見ていたウィルだったが、現れた人物を見て表情を歪めた。
「…なんだよ、お前か」
「何だよってなに? 久しぶりに来たのに」
オウンは肩をすくめて、おどけたように笑った。
「お前の顔を俺が見たいと...
2021-06-21 22:59:32 +0000 UTC
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共に戦う者を失うということに喪失感を覚えることはない。
だがそれでも…胸の内にモヤモヤとした何かを感じはするものだ。
オウンがどこかへ消え去ってから日がたった。
あれから何体か怪人を作りエナジーを回収させているが、量は大したことなく、すぐにヒーローどもに倒されてしまっている。
俺が作り出す怪人があまり強くないことは分かっていたことだが、自分の無力さに悲しみを通り越して...
2021-06-05 05:39:12 +0000 UTC
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耳鳴りが聞こえてしまうほどに、この沈黙は不快だった。
目の前で今まで見せたことのない神妙な顔をして、オウンは俺を見た。
「僕はしばらく出かけることにするよ」
「は?」
「機が熟すまで、僕は他のヒーロー達のところへ行くよ。搾り取れるだけ搾ったら、戻ってくる」
「ふざけるな。その間どうやって怪人を作るんだ」
「…仕方ないな」
オウンが右手を伸ばす。
そこから瘴気が溢れ出すと...
2021-05-31 04:26:42 +0000 UTC
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このお話は、とある3人が恐ろしい目にあっていた時の、2階でのお話……。
✳︎
ココアを両手に持って2階に上がり、俺と蓮の部屋の扉をノックする。
両手が塞がってるから蓮に開けて欲しかったんだけど、何故か反応がない。
仕方なく肘を使って何とか開けて中に入る。
扉を足で閉めながら部屋の中を確認すると、蓮の姿が見当たらなかった。
「蓮?」
ココアをテーブルに置いて、改めて室内を見...
2021-04-29 03:54:12 +0000 UTC
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「あぁ、眠い」
大型バスの1番後ろ。
横に伸びた後部座席には、5人の男が座っていた。
窓の外には山肌と空だけが広がっている。
そんな殺風景すぎる景色を、涼は窓側の席で眺めていた。
「ねぇ涼くんの番だよ! 引いて!」
涼の隣に座る奏多が、両手で持つトランプの札を向ける。
「眠いっつってんだろ」
「分かったから早く!」
「何も分かってねえじゃん…」
涼は窓にもたれていた体を起こ...
2021-03-07 00:36:39 +0000 UTC
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用水路を歩いていたオウンの足が、不意に止まった。
「おいおい、嘘だろ」
呆然として空間を見つめ、信じられないといったように首を振る。
「ガーディアンイエローの洗脳が…解けた?」
遠くで感じていた瘴気が消えた。それはつまりイエローを支配していた核が無くなったということ。
「…ふざけやがってッ」
その焦りを表すように、小刻みに響く足音。
怒りのあまりその身から大量の瘴気が溢...
2021-02-28 05:41:32 +0000 UTC
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5月。
春もそろそろ終わりを迎え、雨の季節へと変わろうとしている時だった。
俺がG.O.Eという組織と出会ったのは......。
・
それはよく晴れたある日の出来事だった。
大学の授業を午前中に終え、バイトまで時間があった俺は、友達の修二と一緒に喫茶店に入ることにした。
テラスの席について、店員にアイスコーヒーを2つ頼む。
それからボーッと辺りを眺めていると、修二がスマホの画...
2021-01-31 23:11:30 +0000 UTC
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「この基地は東京の地下にある。ここに通じる道は他にも幾つかあるが、基本的に俺達は転送を使う」
「転送?」
「あぁ。説明は難しいから省略するけど、要は特殊な力を使って直接、1秒足らずでこの基地にどんな場所からでも来ることができる」
「はぁ〜、便利だな」
・
・
・
大山さんからG.O.Eに誘われた翌々日。
俺は蓮と待ち合わせをして、基地に連れて行ってもらうことにな...
2021-01-31 23:08:37 +0000 UTC
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漂う瘴気は......
そこに踏み入った者の心を惑わせる。
かつては厳格な面持ちと、荘厳な雰囲気を兼ね備えていたこの場所は
今となっては柱も朽ち果て
惨めな廃墟と化していた。
部屋の最奥......
朽ちかけの王なき玉座に
辺りに漂っている瘴気がそこに集まり
何かの形を作り出す。
徐々に人の形に作られていくそれは
数分ののち、1人の青年の姿を作り出した。
黒髪の青年は玉座に頬杖を...
2021-01-31 23:03:27 +0000 UTC
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玉座の前では
ライトとレフトが跪き、己の主の参上を待っていた。
すると、玉座の周囲に漂う瘴気が1つに集まり
黒髪の青年の姿を作り出す。
ウィルという名の主は
他には目もくれずレフトを睨みつけた。
「......どうやら失敗に終わったようだなレフト」
「誠に申し訳ありません」
「じゃあ次はどうする? ライトか? レフトか?」
一瞬ーー。
2人の間に流れた電流。
ライトがゆっくり...
2021-01-31 23:00:38 +0000 UTC
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瘴気の中を歩くライト将軍は玉座の前に立つ同胞である女の姿を見つけた。
黒いローブを身に纏い、素肌を見せることのない彼女は、ライトに気づくとスッと目を細めた。
「大変だったなレフト」
右側に立ち、あえてレフトを見ずにライトは話しかける。
「......良い気分でしょう。私が失敗続きなのは」
「そんな事は思っていない。
......かといって貴様の心配もしていないがな」
「......ふん」
...
2021-01-31 22:54:37 +0000 UTC
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「なぁライト。俺はイマイチ理解できないんだが......お前の計画は失敗したのか?」
「失敗......と言われれば否定はできません。当初の予定とは違いますので」
「......そりゃ残念だ」
ウィルは呆れた笑みを浮かべて天を仰いだ。
有能かもしれないと思っていた部下の失敗に、若干のショックを感じていたのだ。
1人残されているレフトは、ライトの失敗には何の興味もないのか、ただ俯いたまま一言...
2021-01-31 22:47:16 +0000 UTC
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ガーディアンレッド......。
人間でありながら俺に剣を抜かせた、面白い男だ。
剣の腕は俺の足元にも及ばないが、鍛えれば必ず強くなる。
......俺を楽しませるぐらいには。
やはり外の世界は面白い。
奴こそが、俺の好敵手になるに違いない。
これは確信にも近い考えだった。
・
・
ライトが玉座にたどり着くと、既にそこにはウィルが姿を現しており
レフトは立ち上がって彼を見上げていた...
2021-01-31 22:36:09 +0000 UTC
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目が覚めた時、目の前にいたのはオウンだけではなかった。
その横には、黒いスーツに身を包んだ奴が一人。
右手には柄の長い黒のハンマーを持ち、俺に一瞥くれてすぐに目をそらした。
「やぁウィル! ようやくお目覚めだね!」
「誰のせいだと思ってる」
「まあまあ。君が寝ている間に、色々と面白いことが起こったんだ」
オウンの説明で、黒スーツはG.O.Eのヒーローであるガーディアンイエロー...
2021-01-25 00:56:34 +0000 UTC
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漂う瘴気はいつも以上に濃く、足取りは鉛のように重い。
玉座に集結する瘴気は人の形を象り、実体化してもなお集まっていく。
主は......ウィル様は怒りに染まっている。
空気が震えていると勘違いするほどに強烈な殺気が......俺の身体に纏わりつく。
「......レフト」
瘴気の中から聞こえた声に、レフトは肩を震わせ視線を向ける。
「ウィルさーーッ」
レフトの言葉を待たず放たれた膨大な量...
2020-10-02 11:53:58 +0000 UTC
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「それで、エナジーはどれだけ集まった?」
腕を組んで眼前に広がる奇妙な光景を見つめながら、ライトは背後で跪く怪人に尋ねた。
「レフト様ほどではございませんが、前年に集めたエナジーは超えました。このままエナジーの回収を続けるつもりです」
「......だが一般人ばかりだな」
ライトのその言葉を聞いた怪人は、少しの間硬直し...恐る恐る口を開いた。
「そ、それは......G.O.Eのヒー...
2020-10-02 11:41:03 +0000 UTC
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......それは恐れていたことだったが、何となく予想していたものでもあった。
何体もの怪人と自分の部下を倒した奴らならば......。
だから今回のライトの失敗にも...大して驚くことはなかった。
「大変申し訳ありませんでした、ウィル様」
「......残念だぜ」
ウィルはとってつけたように大きくため息をついてライトの反応を見る。
だが彼が顔を上げることは無く、その表情を伺うことはできなか...
2020-10-02 10:44:23 +0000 UTC
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「くそッ‼︎」
自らが作り出した怪人の消滅を感じ取り、ウィルは玉座の肘掛けに拳を叩きつけた。
「やっぱり俺の怪人じゃダメか......」
ウィルが内に秘める瘴気は膨大ではあったが、彼は今まで自ら怪人を作る事はしなかった。
それは何故か......?
彼の作る怪人には、物理的な戦闘力が皆無なのである。
特殊な力を付加する事は可能だが、いざ肉弾戦の戦いになるとあっさり倒されてしまう...
2020-10-02 10:35:22 +0000 UTC
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傷だらけの赤いスーツが遠くに消えて
視界が一瞬にして黒く染め上げられた。
ーーこれで終わりか。
そう思った瞬間、目の前には見慣れた光景が広がっていた。
「よぉ、ライト」
玉座にはウィル様がいつものように座っていた。
怒り......いや、哀れみなのか。
ウィル様の表情は......何とも分かりにくい。
眉間に集まったシワが微かに動き、それから口を開いた。
「覚悟はできてんだろうな?」
...
2020-10-02 10:27:49 +0000 UTC
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頬杖をつき、目を閉じながら、ただ座っていた。
静寂なこの空間でただ1人
自分の部下が向こうの世界で暴れているのを、膨大な瘴気によって感じていた。
ーーそして
一瞬にしてその瘴気が消滅した。
目を開き、宙の一点を見つめる。
......もう戻ってこないことは分かっていたのに
どうしてこんなに虚しいのだろうか。
瘴気など与えなければ、ずっと一緒に入れたのか?
ーー意味のない疑問だね...
2020-10-02 10:17:05 +0000 UTC
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床に胡座をかいて座るオウンが、自分が創り出した怪人が負けたのを感じ取り、呑気に呟いた。
普通なら罰を与えるところだ。
こいつは俺の前に現れてから何体かの怪人を創ったが......正直ライトやレフトのものより明らかに強い。
こいつは俺の瘴気無しで......あれだけの怪人を創り出せる。
つまり、ライトやレフトとは違って、奴は大量の瘴気をその身に宿しているということだ。
未だに謎な部...
2020-10-02 09:54:18 +0000 UTC
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薄暗い部屋の中で
一人イスに座り、机の上の携帯を見ていた。
淡く輝くその画面には
俺と肩を組んで笑う蓮くんの姿があった。
もう何回……こんなことをしているのだろう。
少し荒くなる息。
履いているパンツにはテントが張り、黒い小さなシミを作り出す。
「……ッ」
目を閉じると、頭に思い浮かぶのは
今まで見てきた蓮くんの痴態の数々……。
普段はクールな蓮くんが絶対に見せる...
2020-10-02 09:35:02 +0000 UTC
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この前向こうの世界に行ってから
どれくらいの日がたったのだろうか。
薄暗い空間
朽ちた石柱に、空の玉座。
変わり映えのない景色だ。
ここにウィルがまだ退屈はしなったのかもしれないけど
……消える原因を作ったのは僕だしね。
「あーあ。いつ復活するんだよ」
玉座へ続く階段を何段か飛ばしながら駆け上がって、クルッと向きを変えて腰を下ろした。
「まぁいい」
手のひらからあ...
2020-10-02 09:17:50 +0000 UTC
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